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『言葉による伝え合い』

最終更新日[2014年9月21日]

はじめに…

1

当学園では『言葉は心を伝える大切なもの』(他者との調和・コミュニケーション能力)とし、

*言葉で気持ちを表現する楽しさを感じる
*自分の気持ちを適切に伝えるにはどうすればよいのかを考えてみる 
 *なぜ、人の話を最後まで静かに考えたほうがいいのかを考える
 *なぜ、文字をきれいに書くのかを考える
 *文章がどのようにできているのかを考える

などの視点を大切にして日々教育を行っています。

 子どもたちは日々、感じたり考えたりしたことを思いのままに表現しています。それは、身振りや動作、表情や声など自分の身体そのものの動きに託したり、音や色、形などを仲立ちにしたりして、自分なりの方法で表現しようとします。そうした子どもなりの素朴な表現の中から、幼児が何に心を動かし、何を表現しようとしているのかを受け止め、子ども達が表現する喜びを十分に味わえることが大切であると考えます。
 
 このように自分の表現が他者に受け止められる体験を繰り返す中で、自分なりの表現から、より相手に伝わるような表現を模索していくようになります。


 今年度、第二幼稚園では子どもたちが、『人の言葉や話などをよく聞き、自分の経験したことや考えたことを話し、伝え合う喜びを味わう』ようになるには、どのような環境やかかわりが大切なのかを、当学園の「しせい教育」の『自己肯定感、問題解決力、基礎・基本の重視』を指針として、教師間で話し合い研究を深めました。

2

まず、子どもたちが話しやすい相手とはどのような人なのでしょうか。
*笑顔を返してくれる人
*親しみが持てる人
*気持ちを受け止めてくれる
*共感してくれる人
*視線を合わせてくれる人
*自分の言葉に興味を持って発展させてくれる人
*聞こうとする姿勢を常に持っている人
*頷いて応答してくれる人     等々
 
子ども達が何かを(言葉だけでなく、表情や態度なども)発信しようとする時、また発信した時、それに気付き視線や気持ちを向け、受けとめたり興味を持って聞くことで、子ども達は言葉で伝えたい気持ちになります。

では、子ども達が言葉で伝えたくなるのはどんな時なのでしょうか。

幼児は生活の中で心を動かす体験から、様々な想いを持ち、その想いの高まりを思わず声に出したり、教師や友だちに伝え、共有しようとしたりします。

『先生、見て!チョウが…。』    <年長の活動記録より>

 子ども達が蝶の幼虫(つまぐろひょうもん)を園庭で見つけ飼育することになった。毎日、パンジーの葉や花を採ってきてはケースに入れ、幼虫が葉を食べる様子などを観察していた。
ある日、いつものように飼育ケースを覗きに行ったS君が幼虫の変化に気付き「先生、見て!チョウがサナギになろうとしている。」と教師に伝えると、周囲の子ども達も飼育ケースを取り囲み、変化を観察し始めた。その変化に心動かされ、それぞれが思い思いの気持ちを言葉に出し合っていた。

このように心動かす体験には自然の美しさや不思議さに驚き感動したり、楽しい活動に参加した時、面白い話を聞いたりなどの感動体験などがありますが、他にも話したくなるような事柄があると思います。

<子ども達が話したくなる場面・事柄とは>
● 何かを発見した時(物の存在に気付いた時、物の変化に気付いた時)、疑問を感じたりした時
● 自分の成功体験(できるようになったこと)
● 友達と同じ経験をしたもの 経験の共有→イメージの共有→気持ちの共有
● 自分がしたいこと・してほしいことがある時(欲求を伝えたい時)
● 気持ちが満足した時
● 気持ちが伝わらない時  トラブルの中で自分の気持ちを伝えたい時
● 自分の興味があることを友達に知らせたい時 何かに気付いた時
● 教師がどう思うかと投げかけた時に、幼児が自分の想いや考えを返す時

このような時に子ども達は言葉を発し、教師や友だちに話しかけたりします。さて、それではそんな時、どのようにかかわれば、子ども達は『人の言葉や話などをよく聞き、自分の経験したことや考えたことを話し、伝え合う喜びを味わうようになる』のでしょうか。

『蝉を捕まえてきたよ!』  <年中の活動記録より>

3

  園庭で蝉の声が聞こえ「あっちで声がするからあっちにいそうじゃない?」「今、向こうに飛んで行ったから行ってみよう!」など、多くの幼児が友だちと話しながら蝉探しをしていた。A君は、その様子が気になりながらも他の遊びをしていた。
  翌日、A君が兄と公園で捕まえた蝉を持って嬉しそうに「見て。見て。蝉捕まえたよ!」と、大きな声で周りの教師や友だちに見せながら登園してきた。部屋に入るなり、「先生、これね、昨日お兄ちゃんが公園で捕まえてくれたんだ。みんなに見せてもいいよ。だから忘れないようにピアノの上に置いておくね。」と興奮した様子で話してきた。A君の「だから忘れないようにピアノの上に置いておくね。」という言葉から、A君は集まりの時間にクラスの幼児にも蝉を捕まえたことを伝えたいのだと思い、朝の集まりの際に蝉を紹介する時間を設けた。
A君は最初、恥ずかしそうに小声で話し始めたが、他児が「蝉だー!」「すごーい!」など目を輝かせながら話を聞いたり、「どこで捕まえたの?」「誰と捕まえたの?」など興味を持って質問をしたりしながら聞いているうちに、T君の緊張も和らいだようで、次第に笑顔になり「これね、アブラゼミなんだよ!」「お兄ちゃんが捕まえてくれたんだ。」「公園にいたよ。」などと、大きな声で他児からの質問に答えていた。すると、他の幼児も「僕も幼稚園の桜の木でみつけたよ。」「お家でもミーンミーンって言っていたよ。」など自分の体験したことを伝え始めた。そこで、「蝉の雄と雌ってどうやってわかるのかな?」や「他にはどんな種類の蝉がいるのかな?」「どこが違うのかな?」などと投げかけてみた。すると、「ミンミンゼミもいるよ。」と知っていることを言ったり、「えーわからないよね。」と近くの友だちと話したりしていた。「また発見したことや、図鑑で調べて気付いたことがあったら教えてね。」と声をかけてこの時は終わったが、集まりの後や後日、図鑑を広げて「どこに載っているかな?」「これに載っていたよ!」や「見て。見て。こんなのもいるよ。」「ここが違うね。」など考えたことや発見したことを伝え合う姿がみられた。

 『蝉を捕まえた』という心を動かす体験によって『話したい・伝えたい』という気持ちが生まれたA君。教師には自分の思いや考えを言葉で伝えらていましたが、友だちに気持ちを話すことは少し難しいこともありました。そんなA君でしたが、せみを捕まえてきたうれしさが発表の気持ちを後押しし、またクラスのみんなに伝えた時に、友だちが興味を持ち笑顔で聞いてくれたことで、A君の緊張は和らぎ安心して伝えることができたようです。また、友だちからの質問や投げかけによって、自分は受け入れられている・認められているという感覚を味わい、それによってさらに話したい気持ちが高まっていったように感じます。また、他の子ども達も、A君や周りの友だちが発言する姿を見て、自分も伝える意欲が出てきて、伝え合うことを楽しんでいました。

 興味がある事柄を取り上げ、心を動かす体験ができるような環境構成をすると、子ども達の自発的な会話が生まれてきました。話したい・伝えたいと思った時に、教師がその気持ちが満たされるような環境を構築することで、子ども達は意欲をもって話そうとします。また、聞き手側が話し手の気持ちに共感し、興味を持って聞くことで、話し手は受け入れられている・認められていると感じます。<自己肯定感> そのことが伝える喜びに繋がると考えられます。子ども達の興味関心を見逃さず、その時々に応じた環境構成や言葉かけをすることで、子ども達がより深く意見を交わし、<問題解決>していけるよう、これからもかかわっていきたいと思います。

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