幼稚園では、子どもたちが生活の中で取り巻く環境とかかわり、興味・関心を持ち、その意味や操作の仕方、また物事の法則性に気づき、自分なりに考えるようになる過程を大切にしています。
そのために、当学園では子どもたちができるだけ多くの豊かな【体験】ができるよう心掛けています。
【体験の重視】 種々の具体的体験活動の中で、いろいろな事に気づき、好奇心を持ち、「何だろう」「何故だろう」と一生懸命考え、自分なりに理解しようとし、多少の困難があっても勇気を持って挑戦しようとする。たとえ、失敗したとしても、失敗の中から問題点を見つけ、考え、更に良い解決方法はないかと工夫し、努力する。 <伊藤博士著 しせい教育概論より>
また、子どもたちとの対話を重視した活動を行っています。以下は、その様な子どもたちとの日々の生活の様子を取り上げてみました。
< 水による砂の変化 : 年少の活動記録より > 砂場遊びをしていた時の事、Kちゃんは最初、砂を容器に移したり丸めることを楽しんでいたのだが、遊んでいるうちにイメージが膨らんできたのか、「葉っぱのケーキにしてあげるね!」とケーキ作りを始めた。しかし、何回やってもきれいに固まらず納得いかない様であった。強く押さえたり、そっと崩れないように持ってきてみたりと試行錯誤してみたが、なかなか上手くいかず、「先生、すぐ壊れちゃう。」と伝えてきた。「どうしたらいいかなあ。」と考える様子を見せると、隣で遊んでいたAちゃんが「お水あげようか!」と声をかけ、水をかけた。水が砂に浸透したことに「あ!吸い込んだ!」と驚き、また触れると「冷たい!」と感触の変化を楽しんでいた。水により砂が固まった事を見たK子は真似をして、容器いっぱいに水をくんできてケーキにかけたが、水が多すぎて崩れてしまった。しかし、水をかけたり、だんごを作ったりを繰り返しているうちに、上手く固まる水の適量がある事に気付き、葉っぱをのせた砂のケーキと泥で作ったコーヒー牛乳、そして、スプーンであろうスコップを「先生、どうぞ。」と持ってきてくれた。
水で砂は固まるんだ!という発見を「ほんとだね~」と共感する教師が傍にいることで、その後、試行錯誤を繰り返す姿が見られたのだと思います。
< 虫の食べ物 : 年少の活動記録より > 朝から外で遊んでいたH君とRちゃんとNちゃんが、つまぐろひょうもんの幼虫を見つけてきたので、部屋で飼うことになった。虫カゴには幼虫しか入っていなかったため、子どもたちに「このままだとつまぐろひょうもんお腹すいちゃうね。」と、話すと「ご飯を入れてあげよう!」ということになった。「つまぐろひょうもんのご飯はなんだろうね?」と考える素振りをみせると、虫が大好きなH君が「つまぐろひょうもんはパンジーが好きなんだよ。」と、みんなに教えてくれた。早速、パンジーの葉を採りに行こうとする子どもたちに「パンジーってどれか覚えてる?」と尋ねてみると、図鑑で見たことを思い出したRちゃんとNちゃんが「この前見た!」と言い、図鑑を広げ、探し始めた。図鑑と見比べながら花を探し、見つけると「あった!」と嬉しそうに葉を採ってカゴに入れていた。 別の日、H君がだんご虫をたくさん捕まえてきた。虫カゴを覗き、「いっぱい見つけたね!」と伝えると、誇らしげに「今からご飯探しに行くの。」と言い、図鑑を持って探しに行った。帰ってきて見せてくれた籠には落ち葉が入っていた。
月刊誌に付いてきた図鑑は子どもたちの宝物です。わからないことは自分でも考えますが、本で調べるという経験も大切にしています。
<色水の色の変化に気づく:年中の活動記録より> 子どもたちが作っていた色水がきれいなグラデーションになっていて、同じ色でも濃淡によって色が違って見える。そこで、色水を、いくつか並べ、見比べてみた。「水色になった!」というA君に「水色のマーカーで作ったの?」と問いかけると、「青に水を混ぜたから水色になった。」と言う。それに対し、Yちゃんが「水をたくさん入れたから、薄くなったんだよ」と言ってきた。そこで、本当に水の量で色が変わるのか試すことになった。濃い色水に水を加えていくつか作ってみると、子ども達から、「青から水色になった!」「水を入れたら薄くなったね。」等の言葉が聞かれた。その後も、友だちと作ったものと見比べながら「薄い」「濃い」を意識しながら色水遊びをする子どもの姿が見られた。
色水の袋が破れてしまったのでバケツの中に入れておいたら、色水同士が混ざり合って色が変化していることに子ども達が気づいた。そこで、別々の色を混ぜて色水を作ってみようということになった。Yちゃんが「ピンクと黄色を混ぜるとオレンジになるよ!」と言ったので早速、周りの子どもが作り始めた。色と色を混ぜると何色になるかという表を作ってみた。子どもたちはまずは予想し、それが予想と同じものができた時に記入することにした。毎日作っていく中で、表の結果も増えてきたある日、出来た色水を次から次に入れることを楽しみ、色水が真っ黒になったT君が、「もう黒にしかならない!」と言い、他の子ども達も、それ以上他の色を混ぜても変化がないことに気づいた。T君が、「黒でおわりだね!」と言い、それ以上は混ぜなくなった。
夏場に子どもたちが、毎年楽しむ色水遊びですが、友だちの発言に刺激を受けたり、教師の言葉かけにより意識を持って観察したり、試行錯誤する姿が見られました。
< 野菜や果物って、おもしろいね ~年長のクラス便りより~ > プール開きで、水の神様に、安全にそして楽しく水遊びができるようにとお祈りした後、お供物のりんご・じゃがいも・ピーマン・いりこなどを使って、「どれが水に浮かんで、どれが沈むのか。」を試してみました。大きくて重いリンゴが浮かび、小さないりこが沈んだことに驚いたり、じゃがいもが沈んだことに対して「なぜ沈んだんだと思う?」と尋ねると「地面の下に出来るものだから。」という意見がありました。子どもたちの発想は、実におもしろいですね。 また、ピーマンパーティーやサラダパーティーの調理の際、野菜や果物を縦切り横切りにして『種はどんな風についているか?』というお題で質問しました。見る前に予想を立てることで実際の様子が印象深く心に残るように思います。また、キュウリの種の様子を見た後、ピーマンを観ると種の付いている位置が違います。そこで、「どうして上の方に固まったように種がついているのだろうね。」と尋ねてみると「上から栄養がくるから!」と答えが返ってきました。うかうかしていると、子どもたちの発想に追い越されそうです。 そうそう、リンゴが上部と下部どちらが甘いかご存知ですか。それも、比べてみました!! どちらだったかは、子どもたちに尋ねてみてくださいね。
~自ら考えようとする気持ちが育つための教師のかかわり方、環境設定で大切なもの~ | |
① 子ども同士が互いに真似たり、相手の気持ちや考えに気付けるよう促すこと。 もちろん、子どもたちは、私たち大人の行動も良く観察し、とても興味を持ってかかわってきます。 また、たとえ一緒に遊んでいなくても、同じ場にいる友だちの行動を興味をもって観察し、同じものを作りたいと思ったり、友だちの言動を注意深く聞いていたりして、そんな考え方・方法があるのだなと気付いたりします。 ②「どうしてだろう」と不思議に思う出来事に出会い、その変化に興味・関心を持てるようなかかわり。 教師はどうしたらよいのかをわかっていても、あえて困っている風にして子どもたちになげかけます。 また、自然は不思議な体験の宝庫です。あお虫を育て羽化する過程を子どもたちは目を輝かせて観察していました。 ③投げかけや提案をすることで、試行錯誤し、考えを巡らせている時間を十分に認めること。 あーでもない、こーでもないと子どもたちが考えている間は静かに見守り、何かヒントになることを周りから見つけ出そうとしていたら、何気なく提示することで「あっそうだ!」と発見の喜びを味わえるようにしたいものですね。 ④「比べる」という行動を促す。 比較は子どもたちの自然な行為です。そこから、「なぜだろう。不思議だな。」という気持ちが湧いてきます。 ⑤「面白い」「楽しい」等の喜び、満足感や、「うまくできない」等の葛藤や様々な経験を繰り返すこと。 「面白い・楽しい」は次への意欲になり、「うまくできない」ことは試行錯誤したり、調べたりする行為へ繋がっていきます。 ⑥ 目的、目標を持って活動を行うこと。 目的・目標が大きければ大きいほど、子どもたちは途中で、様々な問題にぶつかることもあります。その時に子どもたちは自分なりの考え行動しますが、自分だけでは乗り越えられないこともあります。教師も一緒に考えていると周囲の子どもたちがそれぞれの意見を伝えることで解決の方法が見つかったり、また、周囲の子どもたちも一緒に考える中で、同じ目的や目標に向かって活動するようになったりもします。 ⑦ 初めて使うもの(用具、遊具)に出会うこと。 初めてみるものに、子どもたちは興味津々。どんなやって使うのだろうと試行錯誤を繰り返します。特に男の子はいろんな道具に熱中します。 ⑧ 想像性を豊かにする。 物語に親しみ、イメージを膨らませたりすることも想像性を豊かにしますが、「こうしたら、どうなるのかな。」と予想を立てて行うことも大切な考える力となります。
子どもたちが、何かに向き合い 考え・調べ・学び合う姿を、これからも支えていきたいと思います。
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